合唱団
お江戸コラリアーず

第19回演奏会

2020年12月6日(日)
ウェスタ川越 大ホール


Greeting


 本日はお忙しい中、合唱団お江戸コラリアーず第19回演奏会にお越しいただき誠にありがとうございます。
 まず、COVID-19の感染者および関係者の皆様に心よりお見舞い申し上げます。関係者と書くとおそらく全世界の人が該当してしまう今回の感染症。予兆なしに大勢の命を奪ってしまう地震などの災害とは違い、戦後日本でここまで「命を守ること」を日々考えつづけることはなかったかもしれません。一日でも早く心安らかな生活が戻ることを願ってやみません。
 さて、3か月の自粛期間を経て活動開始した私たちは、当初8月予定していた演奏会を延期し、代わりに実証実験としてのミニコンサートを開催しました。その経験と各種ガイドラインを踏まえてコンサートの運営を見直し本日改めて演奏会を開催する運びとなりました。
 ご来場のお客様にも対策にご協力いただくことになりますが、ホールの中でしか聞けない演奏空間を楽しんでいただけるよう、精いっぱい歌います。
 第1ステージで今回挑戦する男声合唱の「古典」はF.シューベルトの「水上の精霊の歌」です。ロマン派の表現に苦しんだ私たちですが、先日の弦楽五重奏とのリハーサルはとても刺激的で豊かな音色は私たちの視野を広げてくれました。
 第2ステージはアラカルトステージです。今年も各国の男声合唱を取り揃えましたのでそれぞれのサウンドの違いをお楽しみください。
 第3ステージは松本望さんの「三群の男声合唱のための『Song of the Open Road』」をお届けします。三群の和声が織りなす造形美は録音やオンラインでは味わえないでしょう。また、この曲が生まれたきっかけでもある名門浦和高校グリークラブのOB団体「男声合唱団 Le Terre」さんとご一緒できることは何よりの楽しみです。
 第4ステージは、「くちびるに歌を」を組曲として10年ぶりに演奏します。今のコロナ禍で私たちが歌うことには、ある種の運命を感じています。
 なお、本日は感染症対策の一環で義捐金箱を置くことは控えさせていただきました。東日本大震災から間もなく10年。合唱を愛する仲間に届けたいという東京都合唱連盟の趣旨に賛同いただけるかたは、お手数ですがお振込みで寄付頂けると幸いです。
 最後に、今回の演奏会に多大なる協力をいただきました諸先生方、共演者、スタッフ、団員の家族の皆様に心より感謝いたします。

チーフマネジャー 宇田 文顕

 はや12月ですね。一体2020年はなんだったのでしょうか。
 いまだ多くの音が発されないままに、閉ざされた扉の向こうに押し込められているように感じます。最近ようやく一人、また一人とその扉をどうにかこじ開け、また元の音楽があふれる日々を取り戻そうと動き出しています。私たちの活動もその小さな一つですが、こうして皆さんにお聞きいただけることを心から嬉しく思います。
 また今日の演奏会を迎えることができるのも、今年春以降の多くの取り組みを重ねてきた関係者の皆さんのおかげです。東京混声合唱団をはじめとする様々なマスクの開発、全日本合唱連盟によるガイドラインの策定、東京都合唱連盟によるTokyo Choral Festivalの開催など、実験と実証を丁寧に重ねた科学的な裏付けのある地道なこれらの取り組みが、どれだけ私たち合唱をする人たちを勇気づけてくれたでしょうか。重ねて感謝したいと思います。
 さて、話は変わって今回の演奏会は川越で開催させていただきます。男声合唱にとっては、揺籃の地とも言えるくらい男声合唱の盛んな埼玉。東京の大学に多くの男声合唱団が存在するのも、その原動力となっているのは浦和高校や川越高校などのような高校男声合唱団の存在です。私の周囲にも、多くの強者たちがワセグリやワグネルに入りたくて大学を志望した、という話を聞いて眩しく思ったものです。今も昔も東京六大学をはじめとする大学男声合唱は高校生たちの合唱を続ける存在であることの証左です。我々お江戸コラリアーずとして一貫して取り組んできたことは、そうやって合唱に取り組んできた人たちが大人になってもできる環境を作ることです。自分たちがそういう存在であることはもちろん、多くの合唱団が大人になっても歌いたいという場になることを願っています。そういう意味でも、近年埼玉で成長著しい男声合唱団Le Terreの皆さんとご一緒させていただけることは大変うれしいことです。そして、未来を担う中高生、そして大学生の皆さんに男声合唱の可能性を今後も伝えていきたいと思います。
 無伴奏あり、ピアノあり、そして今回は弦楽も登場します。ロマン派から最新の三群合唱まで、さまざまな男声合唱の響きをお楽しみいただきたいと思います。どうぞお楽しみに。

指揮者 山脇 卓也



Program Notes



1st Stage

Gesang der Geister über den Wassern Op.167, D.714

 Franz Peter Schubert(1797-1828)はオーストリアの作曲家。31年という短い生涯であったものの、1,000曲を超える作品を作曲し、その作品によってロマン派を幕開けるという偉業を達成している。「歌曲王」と称されるように、生涯に600以上のドイツ・リートを作曲しており、美しい旋律と伴奏により、歌曲を芸術の域に高めている。この他には、交響曲、ピアノ曲、室内楽曲にも優れた作品を数多く残した。主要な作品としては、交響曲第7番「未完成」、歌曲「魔王」「アヴェ・マリア」「野ばら」などがある。
 「水上の精霊の歌」は1821年に作曲された、男声8部合唱と弦楽五重奏(ヴィオラ2パート、チェロ2パート、コントラバス)による作品。シューベルトの合唱作品のなかでも、傑作のひとつとして評されている。詩は、ドイツを代表する文豪ヨハン・ウォルフガング・ゲーテによるもの。ゲーテが1779年にスイス旅行をした際に、ラウターブルンネン地区にある高さ300mのシュタウプバッハの滝を見て大きな感銘を受け、6連からなるこの詩を作り上げた。「人の魂は水に似ている」と始まり、天から降りて、また天に戻る水の変容を、人間の精神に喩えている。シューベルトはこの詩をいたく気に入ったようであり、歌曲を1曲、男声合唱曲を2曲作曲した後、4回目の挑戦として当作品を作曲し、ようやく満足出来る作品に仕上げることが出来た。
 まずAdagio molto、コントラバスの「タータタ・タータタ」というリズムから曲が始まり、人間の魂と、永遠に循環し続ける水の類似性が神秘的、幻想的に歌われる。ほどなく、Piu Andanteと速度を早め、岸壁から光り輝きながら、深みへと下っていく水の姿が、ベース系とテナー系の対照的な質感で表現される。続いてUn poco piu mosso、水の流れは激流となり、岩礁により不安げに泡立つ。ベース系のメリスマにより攪拌される水の姿を現し、テナー系のハーモニーが警鐘を鳴らす。その後、水の流れは穏やかになり、谷へ、湖へと進んでいく。シューベルトらしい、暖かな情緒に溢れた音楽。そして、Piu mossoに再度速度を早め、運命の外力である風の存在を、人の一生と同じように、穏やかさと激しさの急激な転換により歌う。最後に、冒頭のテンポと音楽が回帰し、人の精神と水との類似性、そして人の運命が風に似ていることをしめやかに歌いながら、曲を閉じる。

文 / 坂巻 賢一

 
2nd Stage

アラカルトステージ

ペガサス幻想【ピアノ4手版 編曲委嘱初演】

 原曲は、1986から1989年にかけて放映されたアニメ「聖闘士星矢」の初代オープニング曲であり、国内外問わず高い人気を誇るアニメソングである。新進気鋭の作曲家・田中達也氏によってアレンジされた男声合唱も好評を博しており、おえコラでも8月の「小演奏会 お江戸の実証実験 ~ここからはじまる~」で演奏した。その後、団内の熱烈な要望により、キーを上げ、ピアノも四手連弾の豪華版としてバージョンアップしたのが本日演奏するペガサス幻想である。楽譜には新たに、表情指定「コスモを感じて」が追加されている。

文 / 福田 貴之

Alleluia(アレルヤ)

 Stephen Andrewはアメリカ・テキサス州の合唱指揮者・作曲家。彼の作品はアメリカの権威あるコンクールで第1位を受賞しており、現在アメリカ各地で頻繁に演奏されている。タイトルである「Alleluia」はヘブライ語で「主をほめたたえよ」という意味である。この作品での歌詞は「Alleluia」のみであるが、この言葉だけで喜びや恍惚感など、様々な感情を表現している。宗教作品らしからぬ、ノリの良い、弾けるようなリズムが特徴であり、結末に向けて次第に高揚し、熱狂の中に曲を閉じる。

文 / 坂巻 賢一

Psaume 121(詩篇第121番)

 南フランス生まれのユダヤ人、Darius Milhaudはプーランク、オネゲルなどとともに「フランス6人組」として知られる。1921年、ハーバードグリークラブの初の海外演奏旅行を機に「Psaume 121」は作られた。作詞は駐日フランス大使も務めた劇作家ポール・クローデル(オネゲル「火刑台上のジャンヌ・ダルク」など)。詩篇はフランス語に「超訳」され、ミヨーの生き生きとした色彩感溢れる音楽により、古代イスラエルの王ダビデがユダヤの人々とともにエルサレムに「都上り」する喜びが描かれている。ちなみに同時期にプーランクが同じくハーバードグリークラブへ書いた曲が「Chanson à boire(酒飲み歌)」。新世界アメリカからやってきた大学生に送る曲としては、二人ともなかなかエスプリが効いているようだ。

文 / 伊藤 徳和

The Turtle Dove(きじばと)

 Ralph Vaughan Williamsは20世紀イギリスを代表する作曲家のひとり。イギリスの田舎を訪ねて、各地の民謡を収集し、自身の作品にも生かした。「The Turtle Dove」は、18世紀に端を発するイギリス民謡の合唱編曲作品であり、前述の活動が結実したものと言える。恋人同士が旅立ちの前に別れを告げるという内容であり、別離と失恋の悲しみが切々と歌われていく。

文 / 坂巻 賢一

Odoia(オドイア)

 民族的な音楽の内、歌唱を伴う曲については単旋律で歌われることが多いが、ジョージア(旧国名:グルジア)の音楽は多声合唱となっている。多くの場合、3声で構成され、複雑な曲の構成や正確な音程を要求されることが特徴である。20世紀を代表する作曲家ストラヴィンスキーは「人類の作った最高の音楽」と絶賛しており、現在はユネスコの無形文化遺産に登録されている。「Odoia」はジョージア西部の仕事歌。ソリスト集団と合唱に分かれ、勇壮に歌声を交わしていく。

文 / 坂巻 賢一

Didn’t My Lord Deliver Daniel?(主はダニエルを救わなかったか)

 本作の編曲者であるFenno Heathは、イェール大学グリークラブにおいて40年近くに渡って指揮者を務め、数多くの男声作品を発表してきた。テキストは旧約聖書の「ダニエル書」の物語がテーマとなっており、国王の家臣によりライオンの穴に落とされた預言者ダニエルが、神の救いによって無傷で生還したというものである。繰り返し歌われる「then why not every man?(ならば他の皆を救ってくださらないことがあろうか?)」という歌詞は、聖書の世界と自分達の境遇を重ねた黒人奴隷の祈りなのか、はたまた嘆きなのであろうか。繰り返しの転調を経ながら高揚していくクライマックスも聴きどころである。

文 / 福田 貴之

Pilgerchor(巡礼の合唱)

 Richard Wagnerのオペラ「タンホイザー」第三幕より。歌合戦で快楽的な愛を歌い、怒りを買った吟遊詩人タンホイザーは、領主より追放され教皇の赦しを得るため長く苦しい贖罪へ旅立つ。時は流れタンホイザーの帰りを恋人エリザベートが待つ中、ローマからの巡礼者の一団が帰ってくる。長旅を終えた巡礼者たちは、ついに贖罪を得て故郷へ帰ってきた喜びと神への賛美を高らかに歌う。しかしその列にタンホイザーの姿はないのであった。今回はピアノ四手連弾伴奏(当団オリジナルリダクション)にて演奏する。

文 / 伊藤 徳和

 
3rd Stage

三群の男声合唱のための
「Song of the Open Road」

 三群の男声合唱のための「Song of the Open Road」は、浦和高校グリークラブの委嘱により2018~2019年にかけて作曲。昨年3月に同校により全曲初演されました。今回の再演にあたり、軽微な改訂を行いました。
 この曲のコンセプトとなっているのは「異なるものの(同時的)共存」とでも言ったら良いでしょうか。それを最も明確に打ち出しているのが和声の扱いで、近代の作曲家が好んで使った多調のシステムを至る所で使っています。それも、2つの異なる調の共存(複調)はラヴェルやミヨーを筆頭に今ではすっかりお馴染みの響きなので、この作品ではあえて3つの調を同時共存させています(それを実現するのに三群が必要だったという訳です)。この、不協和なのに協和的でもある多調というシステムによる合唱は、聴いてくださる皆さんに一風変わった印象を与えるのではないかと想像しています。その他にも部分的に、異なる拍子、異なるリズムなどが共存する部分があります。また、歌詩に英語の詩とその訳の両方を使っていますが、これもまた言語の共存の試みです。
 …とこのように凝った作り故、パート数も多くパワーも必要、自分の受け持ち以外の調に引っ張られないような強いハート(?)も必要…と、決して歌い易い曲ではないと思いますが、今回はおえコラの皆さんに加えて、初演メンバー多数在籍のLe Terreの皆さんにも一緒に歌っていただけることになり、今年のような制約の多い状況においては奇跡的とも言えるコラボの実現、本当に嬉しい限りです。この特別な機会に、歌ってくださる皆さんが曲に込めた様々なエネルギーを存分に引き出してくださることを確信しています。
 この曲を発掘(?)し、演奏会での演奏を決めてここまで取り組んでくださったお江戸コラリアーずの皆様、初演時から長く取り組んでくださっている(方の多い)Le Terreの皆様に心より感謝いたします。

文 / 松本 望

 
4th Stage

男声合唱とピアノのための
「くちびるに歌を」

曲の概要

 東海メールクワィアー創立60周年記念第48回定期演奏会のため2005年に作曲された。テキストは19世紀後半から20世紀初頭に作られたドイツの名詩の原語とその日本語訳によっている。歌詞は作曲者によって自由に構成されており、終曲は特にその傾向が強い為、楽譜出版時に訳者を作曲者本人としている。2007年に混声版、2011年に女声版がそれぞれ編曲初演された。

曲の特徴

 作曲の意図として、作曲家自身の中のロマンティックな部分を迷うことなく表現した、という点があげられる。以下に初演時にパンフレットに寄せたメッセージを引用する。
 「ドイツ語によってロマンティックな音像を導き出し、母国語によって懐深くの情感を呼び覚ますというのが狙いです。2ヶ国語が交差し、融合し、響きによって昇華してゆくさまを思い描きながら作曲しました」
 こうして出来た4曲はメロディーメーカーたる氏の面目躍如というべきものであり、特に4曲目は世代を超えて愛唱され続けている。

白い雲 ―Weiße Wolken―

 Hermann Hesse(1877-1962) 『青春詩集』より(1902)
 訳詩 高橋健二『ヘッセ詩集』より 新潮社(1950)
 発表当時ヘッセは25歳、スイス移住前の詩である。彼は少年期より自然、とりわけ雲を愛しており、詩と同時期の作品である『郷愁』(1904)には「雲はいっさいの放浪、探求、熱望、懐郷の永遠の象徴である」と記している。この曲も、放浪と自然美を愛する旅人の姿を、雲の如く青空を流れ続けるピアノの音色に託して、さわやかに歌われ、そして流れ去ってゆく。

わすれなぐさ ―Vergißmeinnicht―

 Wilhelm Arent(1864-1913) 
 訳詩 上田 敏『海潮音』より 本郷書院(1903)
 アレントは1864年ベルリン生まれ。初期自然派の抒情詩人。研究書や伝記は皆無であり、人物像はわずかに伝わるのみという「忘れられた詩人」である。「わすれなぐさ」は中世ドイツの伝説に由来する名前で、昔ある騎士が恋人のために花を摘もうと岸を降り、誤ってドナウ川の流れに飲まれてしまう。彼は最後の力を尽くして花を岸に投げて「Vergiss-mein-nicht!」((僕を)忘れないで)という言葉を残して死んだ。その最後の言葉が花の名前となっている。また、花言葉の「真実の愛」「私を忘れないで下さい」も、この伝説に由来している。上田敏の訳は殆ど直訳であるにも関わらず原詩の情感を損なわず、7、5調のひらがなで記述する事で日本的な叙情性まで訳出している点で名訳と称されている。曲は幻想的で耽美な詩の叙情世界を多彩な和音と組み合わせられたリズムで表現している。

秋 ―Herbst―

 Rainer Maria Rilke(1875-1926) 『形象詩集』より(1902)
 訳詩 茅野蕭々 『リルケ詩抄』より 第一書房(1927)
 後に精神的な師と仰ぐ事となるロダンを、執筆取材の名目で訪ねたパリに於いて、プラタナスの街路樹の落葉の姿に印象を得て書いた詩である。
 自らの意思とは関係なく枯れ落ちてゆく木の葉。大地までもが落ち、すべてが孤独や絶望の中に落ちてゆくように感じられる。途方もない高さから果てしなく落ちてゆくような眩暈の中で、最後にそれらを大地のように「限りなくやさしく支える者」がいる事を確信する。詩人にとってはそれがロダンであったのだろう。
 曲は不安を感じさせるような音と無機質なリズムを刻んで速いテンポで落ちてゆき、やがて渦を巻き、乱れる。吹き荒れた後に、救いの存在を確信するかのように強く訴えかける。しかし、また全ては落葉に埋もれてゆき曲は終えられる。後には客席に問いを投げかけるかのような空白の時間が残される。そこへ回答を提示するかのように次曲のピアノが奏でられるのである。

くちびるに歌を ―Hab' ein Lied auf den Lippen―

 原題「Hab' sonne im Herzen 」 Cäsar Flaischlen(1864-1920)
 訳詩 信長貴富
 フライシュレンは詩人としての名声は高くなく、資料もほとんど残されていない。しかし、「くちびるに歌を持て、心に太陽を持て」という一節を格言として知るものは世界中に多く存在する。この詩は1894年にハイキングの途上で書かれ「Neue Klause」(ドイツ詩の協会)で発表されたと言われている。
 作曲者はこの曲について「詩から自然にメロディは生まれてきた」と語っている。作曲に際し、以下の2名による既存の訳を参考にした独自訳をテキストとした。
 山本有三(1887-1974)作家。「路傍の石」などが有名。
 高橋健二(1902-1998)ドイツ文学者。この詩がドイツの家庭で壁や柱にかけられているのを見て、初めて日本に紹介した。
 曲は同じ歌詞を何度も繰り返し、語りかけ、高揚してゆく。平易で明るいメロディと単純にして深いメッセージ。東日本大震災以降、この曲は作曲意図を離れ、困難な状況下にある人々への応援歌としての性質を持つまでになっている。
 現在、コロナ禍において合唱という行為が困難に晒されている状況ではあるが、我々も「くちびるに歌を、心に太陽を」持って歩み続けたい。

文 / 金子 剛史


Profile





指揮

山脇 卓也

 早稲田大学大学院理工学研究科電子情報通信学専攻修了。在学中グリークラブにて学生指揮者を務める。故北村協一氏に指揮の手ほどきを受け、合唱音楽全般において栗山文昭氏の影響を受ける。
 現在、合唱団お江戸コラリアーず、東京純心大学合唱団PureHeart、立正大学グリークラブ、女声合唱団ぴゅあはーと、府中アカデミー合唱団、早稲田大学女声合唱団で指揮者を務める。
 コンクール等へも活発に参加しており、全日本合唱コンクールにおいてはお江戸コラリアーずが9回金賞を受賞、うち5回は第一位の文部科学大臣賞を受賞している。
 信長貴富氏をはじめとする邦人作曲家とのコラボレーションは着実な成果を挙げており、多くの作品の初演に携わっている。
 また、1998年と2013年にはユネスコの無形文化遺産に認定されているラトビア歌と踊りの祭典に参加。
 バルト・北欧の作品に強い関心を持って発信を行っている。JCDA日本合唱指揮者協会会員、21世紀の合唱を考える会 合唱人集団「音楽樹」会員。


指揮・ピアノ・打楽器

村田 雅之

 石川県白山市出身。中学時代より吹奏楽部で指揮者、合唱部にてピアニストを務める。石川県立金沢泉丘高等学校理数科を経て、横浜国立大学工学部出身。大学在学中はグリークラブに籍を置き、1年次より学生ピアニスト、3年次には学生指揮者を務める。
 在学中より多くの一般合唱団や講習会に参加、合唱全般の研鑽を積み、栗山文昭、松下耕、伊東恵司の各氏から影響を強く受ける。
 合唱団お江戸コラリアーず、なにわコラリアーズにて、歌い手の他、指揮、ピアノ、打楽器を担当。音楽関連会社に勤務のかたわら、指揮・指導活動を行っている。合唱団お江戸コラリアーず、横浜国立大学グリークラブ、同団OBメンバーズ、小田原男声合唱団、男声合唱団東鶴の各指揮者、立正大学グリークラブアンサンブルトレーナー。


ピアノ

松元 博志

 国立音楽大学卒業。同大学院音楽研究科修士課程器楽専攻修了。
 これまでにピアノを大内裕子、大黒康子、山内直美、安井耕一の各氏に、室内楽を徳永二男、長尾洋史の各氏に、伴奏法を浅井道子氏に師事。
 大学在学中、『聴き伝わるもの、聴き伝えるもの』シリーズに出演、現代器楽作品の初演等に参加。2010年・2014年、ジョイント・リサイタルを開催。ソロ演奏の他、連弾・2台ピアノのアンサンブルにも取り組むなど積極的にアンサンブルの研鑽を積み、特に合唱との共演は数多い。
 現在、室内合唱団 日唱(日本合唱協会)をはじめ多くの合唱団にてピアニストを務め、声楽・器楽・合唱の共演者として多くの演奏会に出演。新作初演やレコーディングにも携わるなど、活発な演奏活動を行っている。


編曲

田中 達也

 1983年東京生まれ。東京学芸大学大学院教育学研究科音楽教育専攻(音楽コース・作曲領域)修了。第15回奏楽堂日本歌曲コンクール作曲部門(中田喜直賞の部)入選。第19回朝日作曲賞佳作(合唱組曲)。合唱作品を中心に作・編曲を手掛け、作品はこれまでにカワイ出版・音楽之友社・パナムジカ・ウィンズスコアなどの各社から刊行されている。2014年には若手作曲家の新作を集めた演奏会「The Premiere Vol.3」で新作が演奏された。近年ではNHK Eテレ「にほんごであそぼ」、BS-TBS「日本名曲アルバム」にて作・編曲作品が放送されたほか、2018年度のNHK全国学校音楽コンクールでは、全国コンクール(高等学校の部)で行われたスペシャルステージの合唱編曲を担当した。

 

アンサンブル・コラリアーず リーダー

平澤 仁

 5歳よりヴァイオリンを始め、1981年東京芸術大学音楽学部に入学。1985年同大学院に進む。第54回日本音楽コンクールに入選。1986年より国際ロータリー財団奨学生として、ジュリアード音楽院に留学、修士課程を修了。1988年、帰国と同時に東京フィルハーモニー交響楽団コンサートマスターに就任。以来、二十年余りに渡って定期演奏会、新国立劇場のオペラ、バレエ公演などの重責を果たした。現在はソロ活動に専念。在団中も多くのヴァイオリン協奏曲を同団と演奏しているほか、1991年よりリサイタルを開催し研鑚を積み重ねている。室内楽の分野でもマルタ・アルゲリッチ、イヴリー・ギトリス、ポール・メイエ、などの著名アーティストと共演している。
 これまで田中千香士、原田幸一郎、ドロシー・ディレイの各氏に師事。
 ソロCD「虚空はるかに」(WWCC7380)は、各方面で高い評価を得ている。


弦楽

アンサンブル・コラリアーず

 音楽というのはやはり人と人の結びつきだと思うのです。このコロナ禍にあって私個人は無伴奏バッハにいそしむことで時を追いやって過ごしましたが、それでも何度かそれを聴いていただく機会を得たことでどんなに報われたか分かりません。
 今回のシューベルト「水の上の精霊」は第一ヴィオラ、第二ヴィオラ、第一チェロ、第二チェロ、コントラバスという特殊な編成を持ちます。ですのでこの編成でいつも活動しているわけではないのですが、私がこの数年来フリーのオーケストラでたくさんの仲間たちと接して来た中で、特に信頼のおけるメンバーに集まっていただきました。
 アルペジオーネという楽器のために最上の曲を綴ったり、また「ます」の例を持ち出すまでもなくコントラバスの魅力を知り尽くしたシューベルトが男声合唱にこの編成をあてがったひらめきには感心するばかりです。
 本日は皆でそのことに共感しつつ貴重な時間を共有したいと思っております。

文 / 平澤 仁


友情出演

男声合唱団 Le Terre

 当団は、県立浦和高校グリークラブの卒業生により、2015年4月に結成されました。現在、さいたま市内の公民館を中心に活動しています。Le Terre とは、フランス語で「地球」という意味です。私たちはここに3つの意味を込めています。1つ目は、地球のあらゆる場所に存在する古今東西の曲に取り組もうとする意気込み。2つ目は、指揮者としてお招きしている小野瀨照夫先生のお名前(おのせ「てる」お)。3つ目は、男声合唱組曲「青いメッセージ」の終曲「VI ごびらっふの独白」に登場する「るてえる」という歌詞(蛙語で「幸福」を意味します)。ちなみに、Terreは女性名詞ですので、本来用いるべき定冠詞はlaですが、男声合唱団であることや上記の理由から、あえて男性名詞に対して用いる定冠詞leを採用しています。「その演奏会のお客様はそのときにしかいらっしゃらない」を合言葉として今日の演奏に全力で魂を吹き込みます。

文 / 諏訪 智也



Members



Top Tenor

石黒 貴志
宇田 文顕
加藤 翼
小林 亮
斎藤 充昭
須永 紀彦
高松 宏弥
武部 幸生
田村 克彦
塚原 惇平
平野 隆久
福田 貴之
堀田 祥矢
山根 武夫
山脇 卓也
吉岡 駿冶

Second Tenor

相沢 祐太朗
熱田 真久
伊藤 貞陽
伊藤 徳和
植木 俊幸
小沼 達也
鎌田 優樹
小谷 直人
小林 誠和
駒井 太郎
齋藤 和樹
坂巻 賢一
佐々木 智穂
関 大雅
濱田 和哉

Baritone

新垣 善之助
池田 裕
稲田 智昭
岡部 優
金子 剛史
吉川 和美
工藤 歩
田村 侑介
中村 和朗
野中 聡洋
日野原 遼生
山田 光輝
渡部 秀文

Bass

小林 紘努
関 一輝
土屋 稜至
中川 航平
西谷 和起
原 脩
村田 雅之
山根 光夫

 

アンサンブル・コラリアーず

平澤 仁(リーダー・Vla1)
恵藤 あゆ(Vla1)
磯 多賀子(Vla2)
李 あそん(Vla2)
平山 正三(Vc1)
沖澤 直子(Vc1)
神谷 壮(Vc2)
櫻井 慶喜(Vc2)
松井 理史(Cb)

男声合唱団 Le Terre

池田 悠太
石井 秀征
石川 琢
小賀野 爽
河西 亮範
菅野 俊暢
小林 優斗
佐藤 汰樹
島本 恵太
杉本 滉歩
田嶋 廉
留目 那由太
直井 瑠汰
中務 敬
並木 涼
野村 拓夢
原田 崇希
原田 祐
平谷 至
藤井 雅裕
保戸田 遥人
南 朔
村松 秀都
森 勇輝
森脇 淳史
茂呂 浩太郎
山崎 諒介



Schedule



合唱団お江戸コラリアーず
La Pura Fuente
ジョイントコンサート

2021年5月5日(水・祝)
鎌倉芸術館 大ホール

-演奏曲目-
合唱のためのコンポジション 第3番
土田豊貴先生委嘱作品(合同演奏)
ほか

第8回埼玉県高等学校男声合唱団合同演奏会
(招待演奏)

2021年5月16日(日)
さいたま市文化センター 大ホール

合唱団お江戸コラリアーず
第20回演奏会

2021年10月10日(日)
ウェスタ川越 大ホール

-演奏曲目-
男声合唱組曲「吹雪の街を」
木下牧子先生委嘱作品
ほか



Special Thanks



ヴォイストレーナー
大島 博 先生

舞台監督
草薙 みちる 様

フロントチーフ
坂田 峻祐 様

録音
KOSSACK 様

映像撮影
中部クリエイティブ 様

写真撮影
山口 敦 様

印刷物デザイン
倉林 賢 様(KURAGE BRAIN)

フロントスタッフ
阿出川 彬 様
石井 光 様
小宅 巧馬 様
今野 光貴 様
住澤 友莉子 様
高田 充 様
滝田 友香 様
田原 悠 様
中尾 瑞穂 様
林 美由稀 様
馬原 颯貴 様
三好 草平 様
村上 道子 様
矢ヶ崎 綾子 様

 

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(回答期限:2020/12/7 23:59)

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